~ メディア・広告・SNSのガイドラインにも役立つ表現の心得 ~
No.021|A.コピー基礎|A-004|
キャッチコピーのNGワード
コピーライティングには使ってはいけない言葉や表現、いわゆるNGワードがあります。差別的、非道徳的、反社的、虚偽的な類は常識ですが、昨今コンプラ意識も高まっているので、あらためて「基本編」を、本題としてはできるだけ避けるNGワードというか心得的な「本質編」を、それぞれ取り上げます。
目次|INDEX
キャッチコピーに使わないNGワード
<基本編>
~ 決して使わない言葉や表現 ~
※「基本編」は、使わないNGワードとして常識であり、書籍やネットなどで容易に調べられますが、ざっくりながらもあらためて取り上げておきます。再認識や失念防止など、今一度ご参考ください。
1.差別(蔑視・軽蔑・侮辱)
差別をはじめ、蔑視・軽蔑・侮辱などにあたる言葉や表現。言わずもがなですが、当題目に触れるにあたり、やはり真っ先に挙げておくべきNGワードが、差別にあたる言葉や表現になるでしょう。
※参考:「最新 差別語・不快語」「差別用語の基礎知識99」「新・差別用語」
2.不快(卑猥・非道・低俗)
不快をはじめ、卑猥・非道・低俗にあたる言葉や表現。反社会的な類もこれにあたります。明らかな不快はともかく、本位でない、または無知や無配慮から軽率に使ってしまうミスにも注意しましょう。
※参考:「記者ハンドブック」「朝日新聞の用語の手引」「日本語の正しい表記と用語の辞典」など
3.ウソ(虚偽・誤認・詐欺)
ウソをはじめ、虚偽・誤認・詐欺などにあたる言葉や表現。悪意ある方向に扇動するいわゆるフェイクの類も該当します。「嘘、大げさ、まぎらわしい」のJAROでもおなじみですが、誇大な表現はNGです。
「ダメダメ三匹のトーク まぎらワシ編」より
4.盗用(模倣・真似・パクリ)
盗用をはじめ、模倣・真似・パクリなどにあたる言葉や表現。オマージュやリスペクトでは済まない表現もNGです。キャッチコピーに著作権はないという判例もある一方、著作権と同様に、商標登録への抵触はないか、特許情報プラットフォームといった公的サイトでチェックすることも心がけましょう。
5.断定(絶対・最上・比較)
断定をはじめ、絶対・最上・比較などにあたる言葉や表現。絶対(必ず/完全/永久など)、最上(最大・最長/最小・最短など)、比較(世界一・初/日本一・初/特定地域や分野でのNo.1など)といったことを訴える場合、エビデンス(実証・証明)などの明確な根拠がなければ使ってはいけません。
※参考:「7. 最上級表示、No.1 表示」/YAHOO!広告
6.効果(効能・効き目・作用)
効果をはじめ、効能・効き目・作用などにあたる言葉や表現。医療、医薬、コスメティック(化粧品類)、トイレタリー(洗面用品類)、食品、飲料、健康など、効果や作用などを訴求する場合も前述の5.断定と同じく、エビデンス(実証・証明)などの明確な根拠がなければ使ってはいけません。
業界特有の慣例にも注意
金融系・保険系・不動産系・採用系といった業界や分野によって、あるいは新聞・雑誌・テレビ・ラジオ・ネットなどメディアによっては、使ってはいけないNGワードは上記以外にも特有な慣例があるので、当該先のガイドラインやレギュレーションなどの確認や問い合わせを心がけましょう。
キャッチコピーに使わないNGワード
<本質編>
~ できるかぎり使わない言葉や表現 ~
※「本質編」は、できるかぎり使わないNGワードとして、あくまで「当初からは使わないが、ほかにない・より自然・より効果的なら、使う場合もある」という程度のニュアンスで捉えてください。
1.否定
「ない」「ません」のような否定の表現は当初からは使わず、まずは肯定や順接など、通常の言い回しから検討します。要するに「ない・いない・ません・できない」といった否定からではなく、「ある・いる・ます・できる」といった肯定の言い回しから優先して考えるようにします。その上で、
否定でなければ表現できない
否定が自然
否定が効果的
と判断されて初めて否定の言い回しを検討します(実際に否定を使った良質なキャッチコピーは多数あり)。ちなみに「ないものはない」のような二重否定は、強い肯定になります(某No Music~など)。
※例:心に響くキャッチコピーを書く(肯定)/心に響かないキャッチコピーは書かない(否定)
⇒(例は二重否定ではあるが)当初は肯定で検討しつつも、効果的であれば否定を採用する
例外的に好まれる否定
ちなみに、否定でありながらも、例外的に好まれる否定表現の代表例が以下です。
色あせない
終わらない
変わらない
2.曖昧
曖昧な表現はそれ単体で使うことはせず、基本編の5.断定と同じく、明確な根拠とともに使います。ありがちな曖昧表現としては、「ぎっしり・こだわり・しっかり・すごく・ずっしり・たっぷり・ちゃんと・とっても」など。キャッチコピーでは頻繁に見かける表現なのですが、もしこれらを使う場合は、
どんな密度だからぎっしりなのか
どんな素材だからこだわりなのか
どんな対策だからしっかりなのか
どんな有利点だからすごくなのか
どんな重量だからずっしりなのか
どんな分量だからたっぷりなのか
どんな誠意だからちゃんとなのか
どんな理由だからとってもなのか
以上のように、必ず根拠とともに使うことを前提とし、曖昧な表現単体では使うことはありません。
「~の方/~と思います」は使わない
あわせて、曖昧に近しい派生的な例として、「~の方(ほう)」は二者以上の択一でないかぎり、「~と思います・~と思われます」は意図がないかぎり、それぞれ基本的には使うことはありません。
※例:新発売の方はこちらです ⇒ 既発など選択対象がなく、あくまで新初単体であればNG
※例:よい商品だと思われます ⇒ 意図がなければただの私見であり、説得力がないためNG
3.伝聞
伝聞表現はそれ単体で使うことはせず、伝聞元や情報源とともに使います。ありがちな伝聞表現としては、「~とされる・~と言われる・~らしい(※)・~だそう」などが該当します。ただ昨今、過度なクレームや炎上を避ける意図から、あえて断言せずに伝聞が使われることも少なくありません(悲)。
※接尾辞としての「秋らしい季節」「愛らしいしぐさ」などは伝聞には該当しません。
4.紋切
使い古された、手垢のついた(←これらも該当しそうですけど)、いわゆる紋切型のようなありきたりな表現や決まりきった常套句は、意図がないかぎり使いません。ありがちな紋切型としては、「今が正念場・ため息をつく・成り行きに注目・今夜が山だ(山田に非ず、謎)」などが挙げられます。
どちらかというと、取材やインタビューの記事、一般的な原稿や文章では知られた心得ですが、「売切必至・絶賛好評・話題沸騰」などキャッチコピー特有の紋切もあるので注意しましょう。紋切はある意味模倣であり、創造性・独創性に欠け、書き手の思考を停止させるので、使用は控えるのが得策です。
※参考:「紋切型社会――言葉で固まる現代を解きほぐす」
5.用語
概して英略表記やカタカナ表記が多い専門用語・業界用語・難解用語(理解度が低い用語)ですが、これらはできるかぎり一般的な言葉に言い換えます。ありがちな用語としては、以下が挙げられます。
専門用語 … OEM(他社ブランド製造)、QOL(生活の質)、SPA(製造小売業)
業界用語 … オフレコ(記録外・非公表)、テレコ(互い違い)、見切れる(写り込み)
難解用語 … アキュラシー(正確さ)、アプルーバル(承認)、コンセンサス(合意)
いずれも掲載メディアやターゲットによって使わなくもないのですが、見た目や訴求力に劣る点から、補足や注釈を添えてまで、メインとなるキャッチコピーに単体で使うことはありません、当方的には。
判断に悩む「準・難解用語」
悩ましいのが、すでに一般的に理解されているようでいて実はまだ理解度が低い、あるいは捉え方がふんわりならまだしも、人によっては意味合いがズレてしまう、下記のような「準・難解用語」です。
アンダーパス
インセンティブ
LP
キュレーション
コンテンツ
コンバージョン
サステナブル
サブスク
DX
デバイス
BtoB/BtoC
プラットフォーム
フリップ
UI
リテラシー
現時点(2022年8月末日)では、ある程度理解されているかなあという感じで、検索やメディアのヒット数的に多ければ、補足や注釈がなくても、うーん使ってもいいかなあという感じですが、とはいえ、
アンダーパスが目印の隠れ家店
魅力のインセンティブが決め手
LPをチェックすればすべて納得
世の中をキュレーションします
いつでもいろんなコンテンツを
高いコンバージョンを得た商品
サステナブルなくらしをお届け
便利でかしこいサブスクが正解
DXでそのビジネスを一気に加速
これからはデバイスで悩まない
BtoBはもちろんBtoCにも有効的
理想的なプラットフォームの形
フリップにしたためたメニュー
UIに優れているから心配は無用
リテラシーを高めたいあなたに
どうっすか。これら用語は明確にしないと意味がふんわりすぎて理解できません。あくまで説明や写真はなくこれらコピーだけという極端な例ですが、自分は理解してるから大丈夫でしょ的に、何も気にせずこれら準・難解用語をメインにしたコピーだけで訴求することはありません、当方的に。それよりもすべて同じ文字数(半角2つは全角扱い)でキャッチコピー例を捻出した当方をほめたいです(謎)。
※参考:新聞社でのキャリアをお持ちの神保みすずさんの投稿/Facebook
(「CX系」「囲み取材」「フリップ」などの用語、「無言の帰宅」などの紋切について触れた良投稿)
6.好み
好みとはすなわち自身の好き嫌いや偏向にあたる言葉や表現で、何の根拠もない贔屓的なキャッチコピーを意味します。企業や官公庁といったクライアントや依頼者からの発注で作成する、当方が関わるような商業案件の場合、自身の好みでキャッチコピーを書くことはしません、少なくとも当方の場合は。
提案行為は好みにあたるか
「そうはいってもさ、提案する以上は少なからずアンタの好みなんじゃねーの?」
うむ、確かに。選んで提案する行為は一見、好みといえそうです。しかしながら、
最も平易
最も自然
最も文字数が少ない
最も検索数が多い
最も懸念点が少ない
など、確固たる根拠や意図がともなった提案は好みというよりロジックのともなった提案になるので、好き嫌いにはあたりません(キャッチコピーにかぎらず、ビジネスの提案は総じてそうでしょうが)。
あくまでも決裁者や採択者はクライアントや発注者なので、選択する側は好みであっても問題ないですけど、キャチコピーを書く側は「好みだけ」で提案しないのが礼儀であると、当方は信じています。前述の二重否定=強い肯定でいうならば「ロジックのともなわないキャッチコピーは提案しない」です。
※参考:「説明組み立て図鑑」「一番伝わる説明の順番」「ロジカルな話し方超入門」
キャッチコピーの社会的役割
キャッチコピーに創造性を
「キャッチコピーに使ってはいけないNGワード」だなんて刺激的な表題でアレでしたが、過度な自主規制ではなく、言葉や表現への意識が高まっていけばとの想いです。創造性ある言葉や表現がともなったキャッチコピーが、社会や人々の興味や行動といった本来の役割をさらに果たしていけば、本望です。
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(了)